SNS型投資詐欺の急増|警察庁統計から見る2025〜2026年の傾向と手口

SNS型投資詐欺は、警察庁が特殊詐欺と並ぶ独立の統計区分として扱う類型で、2024年以降、認知件数・被害額のいずれも急増している。誘引はSNSのダイレクトメッセージや広告経由で始まり、LINEなどの別のプラットフォームに誘導された後、「投資金」「手数料」などの名目で金銭を振り込ませる構造を持つ。1件あたりの被害額が1,000万円を超えることも珍しくない高額被害の性格があり、被害に気づく前に何度も追加送金してしまう心理的構造も指摘されている。本記事では警察庁の公表資料をもとに、認知件数の傾向、手口の典型パターン、共通構造、予防と相談窓口を整理する。

著者コメント

詐欺の名前や登場するプラットフォームは入れ替わるが、基本の骨組みは「SNSでの接触 → 別チャネルへの誘導 → 少額の成功体験 → 大口送金の要求 → 出金拒否・連絡途絶」でほぼ動かない。この骨組みを先に押さえておくと、初見の勧誘でも判断が効きやすくなる。

SNS型投資詐欺とは — 定義と警察庁による分類

SNS型投資詐欺は、警察庁の統計区分において、SNSを起点とした投資勧誘によって金銭をだまし取る類型として整理されている犯罪カテゴリだ。警察庁は2023年から特殊詐欺と並ぶ独立の統計区分として、SNS型投資詐欺およびSNS型ロマンス詐欺の認知・検挙状況を公表している。位置づけとしては特殊詐欺(オレオレ詐欺・還付金詐欺等)とは別カテゴリだが、統計公表は同時に行われることが多い。

警察庁のSNS型投資詐欺の手口解説によれば、典型的な流れは次のようになる。SNSのダイレクトメッセージや広告で被害者と接触し、LINEなどの別のSNSに誘導した後、「株や暗号資産に投資すれば利益が得られる」などの言葉で信用させ、「投資金」や「手数料」といった名目でネットバンキング等を通じて金銭を振り込ませる。被害者が詐欺と気付くまで何度も送金を続けてしまい、1件当たりの被害額が1,000万円を超えるケースも珍しくない。

SNS型投資詐欺の特徴は、対面での接触が一切なくても契約類似の関係が構築される点、被害者側から自発的にプラットフォームを移動する行動が組み込まれる点、成果として提示される数値が電子的な画面表示のみで完結する点の3点だ。この構造上、被害に気づく段階では既に大きな金銭損失と長期のやり取りが積み重なっていることが多い。

認知件数と被害額の傾向

警察庁が継続的に公表しているSNS型投資・ロマンス詐欺の統計では、2024年以降、認知件数・被害額のいずれも前年比で大きく増加している状況が示されている。警察庁SOS47の発生状況ページでは、月次の暫定値と年次の確定値が公表されており、最新の傾向はここで随時確認できる。

令和7年(2025年)中の警察庁公表資料では、SNS型投資・ロマンス詐欺の合計で認知件数・被害額とも前年比で大きく上回る水準が示されている。1件あたりの被害額は1,000万円台に達する水準で、特殊詐欺全体と比較しても1件あたりの金銭損失が非常に大きい類型として位置づけられる。数値の正確な最新値は前掲の警察庁ページの公表値を確認するのが確実だ。

被害者の年齢層としては、警察庁公表資料で40代から60代が中心に位置しており、いわゆる高齢者だけの問題ではないことが数字にも表れている。従来の特殊詐欺(オレオレ詐欺等)の被害者中心層が高齢者であるのに対し、SNS型投資詐欺は現役世代を含むより広い年齢層に及ぶ点が特徴となっている。この点は「自分は大丈夫」と考えている世代にも被害が及んでいる実態を示しており、警察庁の注意喚起でも繰り返し指摘されているポイントだ。

手口の典型パターン — 誘引媒体別の特徴

誘引媒体別に見ると、SNS型投資詐欺の入口には共通する特徴がある。プラットフォームによって具体的な演出は異なるが、被害者を別チャネルに誘導する構造は共通している。

広告経由の誘引:SNSプラットフォームや動画配信サイトの広告として表示される投資勧誘が入口となるパターンだ。著名な投資家・経営者・タレントの画像や名前が無断で使用され、「無料の投資セミナー」「特別な投資情報」などのメッセージで誘導される。広告をクリックした先で、SNSアカウント(多くはLINE)の追加を求められる。

ダイレクトメッセージによる接触:Instagram、X、Facebookなどのプラットフォームで、投資助言を装ったアカウントからダイレクトメッセージが送られてくるパターンだ。相手のプロフィールは投資成功者を思わせるものが多く、実際には他人の画像を流用したフェイクプロフィールであることが後で判明することが多い。

LINEへの誘導とグループチャットへの参加:初期接触の後、多くの場合LINEへの移行が促される。LINEでは「投資グループ」に参加させられ、他のメンバーが「利益を得た」と発言する投稿が並ぶ。実際にはこれらのメンバーの相当数が同一犯行グループの構成員である可能性が指摘されている。集団心理を利用した勧誘の場として機能する構造だ。

マッチングアプリ経由:マッチングアプリで知り合った相手が、恋愛感情を醸成した後に投資の話を持ちかけるパターンだ。次章で扱うロマンス詐欺との重なりが強く、被害者側が個人的な信頼関係の中で判断力を失う流れを持つ。

いずれの入口も共通しているのは、当初の接触プラットフォームから別のプラットフォームに移動する過程で、事業者の実在確認や公的な情報検証の機会が失われていく点だ。プラットフォームを移動するたびに、その事業者の実態確認が困難になる構造がある。

SNS型ロマンス詐欺との交差点

警察庁の統計では、SNS型投資詐欺とSNS型ロマンス詐欺は別区分で計上されているが、実際の被害では両者が組み合わさった手口が多く報告されている。ロマンス詐欺は、SNSやマッチングアプリで恋愛感情や親近感を醸成した後、金銭を要求する構造の詐欺だ。

両者の交差点として代表的なのは、恋愛感情の醸成を経て投資話に発展させるパターンだ。マッチングアプリで知り合った相手と親密なやり取りを続けた後、「二人の将来のために投資で資金を作らないか」といった話題転換で投資勧誘が始まる。感情的な信頼関係が先に構築されているため、通常であれば警戒される投資話に対しても被害者側の判断が緩みやすい構造になる。

この交差点で発生する被害の特徴は、金銭的損失に加えて、恋愛関係が虚偽であったという事実そのものが二重の精神的損害となる点だ。相談窓口や家族への相談を躊躇する要因にもなり、被害の長期化・大規模化につながりやすい。警察庁の注意喚起でも、この心理的構造が被害の発見を遅らせる要因として指摘されている。

詐欺の共通構造 — なりすまし・偽サイト・偽アプリ・偽の出金画面

誘引方法は多様だが、SNS型投資詐欺には共通する構造要素がある。以下の4点は警察庁の手口解説でも繰り返し指摘されている典型要素だ。

有名人・専門家なりすまし:投資家、経営者、タレント、金融専門家などの著名人の名前・画像を無断で使用し、その人物が投資助言・投資勧誘を行っているかのように装う手法だ。近年は動画や音声を人工的に合成する技術も悪用されており、実在人物の映像・音声を模した偽動画が拡散されるケースも報告されている。

偽サイト・偽アプリ:実在する証券会社・投資プラットフォームに似せた偽サイト、または独自ブランドの投資プラットフォームを装った偽サイト・偽アプリが使用される。デザイン上は本物のサービスと見分けがつきにくいレベルまで作り込まれていることがあり、URLやドメイン名を注意深く確認しないと真偽の判断が難しい。

偽の出金画面と少額の成功体験:初期段階では、少額の投資に対して「利益が出た」という表示が行われ、一部の少額出金にも応じる例がある。この少額の成功体験が被害者の信頼を強化し、大口送金へと誘導する装置として機能する。実際には表示されている残高は事業者側で操作可能な画面上の数値に過ぎず、大口の出金要求段階で「税金が必要」「手数料が必要」といった追加請求が始まり、最終的に出金は実現しない構造になっている。

追加請求と心理的拘束:出金しようとすると、税金、手数料、保証金、名義変更費用などの名目で追加の入金が要求される。既に相当額を投じているため、追加入金しないと既払金を回収できないという心理的拘束が働き、被害額が雪だるま式に増加する構造がある。この段階で家族が発見して警察や金融機関に相談することで、被害の拡大が止まる例もある。

被害に遭わないための予防視点

予防の観点は、初期段階での判断材料をいくつ持てるかに集約される。以下の視点は、警察庁の注意喚起や金融庁の情報でも繰り返し取り上げられている基本的なチェック項目だ。

金融商品取引業の登録の有無を確認する:日本国内で金融商品取引業を営むには、内閣総理大臣の登録が必要となる。金融庁の「免許・許可・登録等を受けている事業者一覧」で登録業者を確認できるほか、金融庁ウェブサイトでは業種横断的な検索機能も提供されている。相手が「投資会社」「ファンド」などを名乗る場合、登録の有無は最初に確認すべき項目だ。無登録業者による投資勧誘は、それ自体が金融商品取引法違反となる。

「必ず儲かる」「元本保証」といった表現に警戒する:金融商品取引法では、断定的判断の提供が禁止されている。登録された正規の金融事業者は、リスクの説明義務を負っており、断定的な収益予測を提示することはない。「必ず儲かる」「元本保証」「絶対に成功する」などの表現が出た段階で、正規の勧誘ではない可能性が高いという判定材料になる。

プラットフォーム移動の要求を判断のトリガーにする:SNSで接触した相手が別のSNS(LINE等)に移動するよう求めた段階で、判断を一度立ち止まる。プラットフォーム移動そのものが直ちに詐欺を意味するわけではないが、SNS型投資詐欺の典型パターンにこの動きが組み込まれている以上、警戒レベルを上げるトリガーとして機能する。

SNS上の「成功体験」の投稿を独立の情報源で検証する:LINEグループで他のメンバーが「利益が出た」と発言しても、それが独立した第三者の発言なのか、犯行グループ側の演出なのかは確認できない。SNS上の書き込みを情報源とせず、公的統計や金融庁の注意喚起、報道記事など、独立した情報源で照合する姿勢が予防の基本になる。

家族・第三者への相談を早期に行う:被害者本人が判断を続けている限り、当事者バイアスによる誤判断が積み重なる構造がある。少額でも投資に関わり始めた段階で、家族や信頼できる第三者に話す習慣が、被害の拡大を止める最も実効的な予防策として警察庁の注意喚起でも強調されている。

被害に遭ってしまったときの相談窓口

被害に気づいた段階での初動は、犯人側の資金移動が進む前に、金融機関の口座凍結など被害拡大の防止措置を取れるかがポイントになる。時間の経過が対応可能性を狭めるため、早期の相談が実務的に有効になる。

警察相談専用電話 #9110:警察庁が案内する相談窓口で、緊急性のない相談やアドバイスを受けたい場合の第一の窓口となる。SNS型投資詐欺の被害または疑いがある場合、事実関係の整理と最寄り警察署への案内が受けられる。生命・身体に危険が及んでいるなど緊急の場合は110番となる。詳細は警察庁SOS47のポータルサイトで案内されている。

金融機関への連絡:振込先の金融機関に連絡し、口座凍結の可能性について相談することは、被害拡大の防止と犯罪利用預金口座からの被害回復(振り込め詐欺救済法に基づく被害回復分配金の申請)の入口となる。ただし、既に犯人側で資金が移動されている場合、回復可能な金額は非常に限定的になる点は前提として押さえておく必要がある。

消費生活センター(消費者ホットライン188):局番なしの188で最寄りの消費生活センターにつながる。事業者との交渉のあっせん、他窓口の紹介まで対応する。詳細は消費者庁のページで確認できる。相談は無料で、通話料のみ利用者負担となる。

金融庁への情報提供金融庁では、無登録業者による違法な勧誘に関する情報提供窓口を設けている。他の被害の予防に向けた行政対応の資料にもなる。

弁護士会・法テラス:民事的な回収を検討する段階では、弁護士への相談が選択肢となる。損害額が大きい、事業者側との交渉が必要となる場合、各地の弁護士会が実施する法律相談や、法テラス(日本司法支援センター)を経由した弁護士相談が窓口となる。

よくある質問(FAQ)

よくある質問

Q. SNS型投資詐欺とはどんな詐欺ですか?
警察庁の統計区分で、SNSを起点とした投資勧誘によって金銭をだまし取る類型として整理されている犯罪カテゴリです。SNSのダイレクトメッセージや広告経由で接触し、LINEなどの別のSNSに誘導した後、「株や暗号資産に投資すれば利益が得られる」などと信用させ、「投資金」「手数料」といった名目で金銭を振り込ませる構造を持ちます。1件あたりの被害額が1,000万円を超えるケースもある高額被害の性格を持つ類型として警察庁が注意喚起を継続しています。
Q. LINEグループへの投資勧誘はすべて詐欺ですか?
LINEグループでの投資関連の情報交換すべてが詐欺というわけではありません。ただし、警察庁が公表している典型手口では、SNSで接触後にLINEグループに誘導し、他のメンバーの「成功体験」を並べて信用させるパターンが繰り返し指摘されています。判別のポイントは、勧誘者の事業者情報(金融商品取引業の登録の有無)が確認できるか、「必ず儲かる」等の断定的表現が使われていないか、外部から検証できる情報源で内容を裏取りできるか、の3点です。
Q. 出金できないと言われました。取り戻せますか?
残念ながら、被害額の全額を取り戻せる保証はありません。ただし、金融機関に速やかに連絡することで犯罪利用預金口座の凍結が実現できれば、振り込め詐欺救済法に基づく被害回復分配金の申請対象となる可能性があります。すでに犯人側で資金が動かされていた場合、回復可能な金額は非常に限られます。「税金を払えば出金できる」「手数料を払えば残高を戻せる」といった追加請求は同じ手口の延長線上にあるため、それ以上の入金は行わず、警察と金融機関にすぐ相談することが重要です。
Q. 金融庁登録業者はどこで確認できますか?
金融庁ウェブサイトの「免許・許可・登録等を受けている事業者一覧」で確認できます。業種ごとにExcelファイルやPDFファイルで公表されており、事業者名や電話番号での検索も可能です。また、金融庁が運用している金融事業者一括検索機能を使えば、業種横断的にスマートフォンからも検索できます。相手が「投資会社」「ファンド」「投資助言業」などを名乗る場合、まずここで登録の有無を確認するのが基本です。
Q. 家族が被害に遭っているようです。どうすればいいですか?
まず家族本人の話を否定せずに聞き、状況の全体像(相手のSNS、送金先、送金額、これまでの経緯)を把握することが出発点です。そのうえで、警察相談専用電話#9110または最寄り警察署への相談、送金先金融機関への口座凍結の可能性の確認、消費者ホットライン188への相談を、状況に応じて並行して進めます。家族が「これは投資であって詐欺ではない」と主張している段階では、頭ごなしに否定するのではなく、金融庁の登録業者一覧で相手事業者を照合する作業を一緒に行うと、事実に基づいた対話ができる場合があります。

まとめ

SNS型投資詐欺は、警察庁が独立の統計区分として扱う類型で、2024年以降、認知件数・被害額のいずれも急増している。1件あたりの被害額が1,000万円を超えることも珍しくない高額被害の性格を持ち、被害者層は40代から60代を中心に幅広く分布する。

手口の入口は多様だが、共通する構造として、SNSでの接触、別プラットフォームへの誘導、少額の成功体験、大口送金の要求、追加請求と出金拒否、連絡途絶、という骨組みが繰り返し確認できる。有名人なりすまし、偽サイト・偽アプリ、偽の出金画面といった演出要素も類型間で共通する。

予防の要は、金融商品取引業の登録の有無を金融庁の登録業者一覧で確認する、断定的表現を判断のトリガーにする、プラットフォーム移動の要求を警戒サインとして扱う、家族や第三者への早期相談を習慣化する、という基本項目に集約される。被害に気づいた段階では、警察相談専用電話#9110、送金先金融機関、消費者ホットライン188、金融庁への情報提供を、時間との勝負として並行して進めることが実務的な初動になる。個別の勧誘文句を追うのではなく、共通構造と相談窓口の位置を先に押さえておくことが、実効的なリテラシーになる。